国や自治体が求職者向けに運営している職業訓練所。
職業訓練所を活用すれば転職に必要なスキルを無料、あるいは格安で身につけることができ、転職が有利になります。
そのため、
職業訓練所に通いたい!
と考えている方も多いのではないでしょうか?
ただ、メリットがある一方で、「職業訓練所に通うと転職が難しくなる」という意見も散見されます。
そこでこの記事では、転職の際に活用できる施設である職業訓練所について紹介していきます。
職業訓練所の概要についてはもちろん、職業訓練所に通うメリット・デメリット〜申し込みの方法まで詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
職業訓練所の仕組み

職業訓練所は、職場を退職して失業してしまった方やキャリアアップを考えている方が知識やスキルを身につけるための施設です。
学べる内容はさまざまで、IT系から介護まで、ありとあらゆるジャンルの講座が用意されています。
また、訓練の期間も訓練所によってさまざまです。
6ヶ月未満で終了する短めのコースもあれば、1年以上かけて知識やスキルを身につけるコースもあります。
職業訓練の種類

転職するためのスキルを身につける場所である職業訓練所ですが、職業訓練所で受けられる職業訓練は、
- 失業保険を受給している求職者向けの訓練所
- 雇用保険を受給していない求職者向けの訓練所
の2つに分けられます。
それぞれの職業訓練について詳しく解説していきます。
1. 失業保険を受給している求職者向けの職業訓練
退職した後に失業保険を受給するための手続きをおこなっている求職者向けの職業訓練が、「離職者訓練」と呼ばれる職業訓練です。
訓練を受けるためのテキスト代などを実費でまかなう必要はありますが、職業訓練自体は無料で受けられます。
2. 雇用保険を受給していない求職者向けの職業訓練
雇用保険を受給していない求職者向けの職業訓練の分類はさらに細かく、
- 在職者訓練(キャリアアップ講習)
- 学卒者訓練
- 求職者支援訓練
の、3つに分けられます。
それぞれの職業訓練について詳しく解説していきます。
在職者訓練(キャリアアップ講習)
在職者訓練は、現在企業に勤務し、働いている方を対象とした職業訓練です。
在職者が対象になるため、平日の夜間や土日に訓練がおこなわれることがほとんどです。
また、離職者訓練とは異なり、テキスト代以外に一回あたり数百円〜数千円程度の受講料が必要になります。
訓練期間も短く、1週間以内で完了する訓練がほとんどです。
学卒者訓練
学卒者訓練は、中学や高校を卒業した人を対象におこなわれる職業訓練です。
在職者訓練と同様に、受講するにはテキスト代だけでなく受講料を支払う必要があります。
受講する職業訓練の専門性で、
- 普通課程
- 専門課程
- 応用課程
と、訓練の種類が分かれており、それぞれの過程において入学金と年間の受講料として数十万円必要になります。
求職者支援訓練
支援者支援訓練は、すでに離職してしまっているものの失業保険を受給するための条件を満たしておらず、失業保険を受け取ることができない方向けの職業訓練です。
求職者支援訓練では、月10万円の給付金を受け取りながら無料の職業訓練が受けられ、さらに職業訓練が終了した後は就職までサポートしてもらえるようになっています。
また、パートやフリーランスから正社員としての採用を目指す方など、条件を満たしていれば在職者でも利用可能です。
職業訓練所に通って転職活動に取り組むメリット

勤めている会社を退職した後すぐに転職せず職業訓練所に通いたいと考えているのであれば、職業訓練所に通って転職活動に取り組むメリットについて正しく理解しておかなくてはいけません。
職業訓練所に通って転職活動に取り組む主なメリットとしては、
- 収入を得られる
- 知識やスキルが身につく
- サポートが受けられる
- 支援員や訓練生とのつながりができる
の4点があげられます。
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
1. 収入を得られる
在職者訓練(キャリアアップ講習)と学卒者訓練は受講するのにお金がかかる職業訓練ですが、離職者訓練と求職者支援訓練は無料で受けられる職業訓練で、収入も得られます。
離職者訓練の場合、条件さえ満たしていれば失業保険の受給期間が延長されるため、失業保険で収入を得ながら訓練を受けることが可能です。
求職者支援訓練は失業保険こそ受け取れませんが、毎月給付金として10万円が支給されます。
2. 知識やスキルが身につく
未経験から新しい業界に挑戦するために転職する場合、その業界の知識やスキルを身につけなくてはいけません。
しかし、転職活動と勉強を並行しておこなうのは決して簡単ではありません。
失業保険が受給できずに収入源が断たれてしまったり転職期間が長くなったりすると勉強どころではなくなってしまう可能性もあります。
一方、職業訓練所では、収入を得ながら知識やスキルを学ぶことができます。
転職活動は訓練期間が終了してからおこなうため、転職活動のための時間を確保する必要もありません。
3. サポートが受けられる
職業訓練所には、転職や今後のキャリアについての相談にのってくれるキャリアコンサルタントが在籍しています。
通常キャリアコンサルタントに相談するには転職サイトや転職エージェントに登録しなくてはいけませんが、職業訓練所では訓練期間中にいつでもキャリアコンサルタントへの相談が可能です。
また、職業訓練所では訓練が終了した後のことも考え、
- 応募書類の作成や添削
- 面接対策
- 求人の紹介
などもおこなってくれます。
4. 支援員や訓練生とのつながりができる
職業訓練所であなたをサポートしてくれるのはキャリアコンサルタントだけではありません。
職業訓練所には支援員も常駐しており、職業訓練所での活動をサポートしてくれます。
また、職業訓練所にはあなたと同じように知識やスキルを身につけて転職したい・キャリアアップしたいと考えている求職者もいます。
一人で転職に向けて勉強していると、転職や収入のことが頭をチラつき、どうしてもネガティブになってしまいがちです。
職業訓練所に通って転職活動するデメリット

退職後、すぐに転職せず職業訓練所に通ってから転職する方法にはメリットだけでなくデメリットもあります。
職業訓練所に通い始めてから後悔しないためにも、メリットだけでなくデメリットについても事前にしっかりと確認しておかなくてはいけません。
職業訓練所に通って転職活動に取り組む主なデメリットとしては、
- 転職先が決まるまでに時間がかかる
- 身につく知識やスキルが訓練所によって異なる
- 働いているときより収入が低くなってしまう
の、3点があげられます。
それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
1. 転職先が決まるまでに時間がかかる
職業訓練所での訓練期間は訓練所によって異なりますが、訓練期間が終了してから転職することになるため、どうしても転職先が決まるまでに時間がかかってしまいます。
職業訓練所に通っている期間は履歴書にも記載できるので、面接の際に空白期間として受け取られてしまう心配はありません。
ただ、なるべく早く転職したいと考えている方にとってはネックになるポイントです。
2. 身につく知識やスキルが訓練所によって異なる
職業訓練によって学べる知識や身につけられるスキルは異なりますが、これも職業訓練に通う上でネックになる可能性があります。
例えば、Web系のスキルや医療事務など人気が高く需要もあるスキル等であれば問題はありませんが、中には需要の少ない知識やスキルについて学ぶ職業訓練もあります。
その場合、訓練が終了した後に応募できる求人が限られてしまい、
就職先がなかなか決まらない…
といった状況になってしまいかねません。
3. 働いているときより収入が低くなってしまう
職業訓練所に通っている期間中は、失業保険や手当などある程度の収入を確保できるようになっています。
しかし、失業保険で受け取れる基本手当日額は、少ない場合で賃金日額のおよそ50%、多い場合でも賃金日額の80%しか受け取ることができません。そのため、働いていたときよりも収入は低くなってしまいます。
また、求職者支援訓練の場合だと受け取れるのは月10万円だけですし、公共職業訓練で受け取れる手当は数万円程度です。
職業訓練所は転職活動に不利になる?ならない?

職業訓練所が気になってはいるもののイマイチ利用できずにいる方の多くが気になっているのが、「職業訓練所は転職活動に不利になるのか」という点についてではないでしょうか?
職業訓練所についてリサーチしているとそういった口コミが出てきてしまうため、利用を躊躇してしまっている方も多いかと思います。
しかし、職業訓練所に通うことで転職活動が不利になってしまうことはありません。
厚生労働省が公開しているデータによると、施設内訓練を受けた方の就職率が86.8%、委託訓練を受けた方の就職率が75.1%となっています。
これは訓練終了後の3ヶ月間で転職先が決まった人の割合ですが、ほとんどの方が転職できているのがわかります。
一方、職業訓練を受けずに転職する場合、22%の方が転職先を決めるのに3ヶ月以上かかっています。
参考:https://type.jp/s/first/f_period.html
職業訓練所を利用するときの流れ

退職後すぐに転職せず、職業訓練所に通ってスキルを身につけてから転職したいと考えているのであれば、職業訓練所を利用するときの流れについても確認しておきましょう。
実際に職業訓練所を利用するときの大まかな流れは以下のとおりです。
- ハローワークで職業訓練所の説明を受ける
- 職業訓練所の説明会に参加する
- 受講を申し込む
- 選考を受ける
- 入所する
それぞれの工程について詳しく解説していきます。
1. ハローワークで職業訓練所の説明を受ける
職業訓練書の申込みはハローワークでおこなう必要があり、情報のリサーチもおこなえるようになっているので、まずはお住まいの地域のハローワークに足を運びましょう。
また、その直近で申し込める職業訓練をリストアップしてくれるはずなので、そのリストの中からどの講座に申し込むか決め、申込みをおこないましょう。
もし今後のキャリアについて考えるのが難しかったりどの職業訓練所を利用するべきか判断するのが難しかったりする場合は、ハローワークの担当者に相談しながら選ぶようにしてください。

2. 職業訓練所の説明会に参加する
いくら魅力的な職業訓練所でも、ハローワークの担当者の説明やパンフレットだけで申し込みを決めるのはおすすめできません。
そこでぜひおすすめしたいのが、職業訓練所が開催する説明会への参加です。
説明会には無料で参加できますし、訓練所によっては見学させてもらえることもあるので、積極的に参加するようにしましょう。
職業訓練所を利用するには後々選考を受ける必要がありますが、説明会に参加することで担当者にやる気をアピールできますし、顔を覚えてもらってアピールすることもできます。
3. 受講を申し込む
説明会に参加し、申し込みたいと思える職業訓練所が見つかったら、ハローワークから申し込みをおこないましょう。
申し込む際には、
- 受講申込書
- 写真(4 × 3cm)
- 雇用保険受給資格者証
の、3点が必要になります。
受講の申込書は、ハローワークや説明会で受け取れるパンフレットに備え付けられており、一部の自治体だとWebサイトからダウンロードすることもできます。
雇用保険受給資格者証は、職業訓練を受ける資格の確認と失業手当の残りの給付日数の確認に用いられます。
ハローワークでの申し込みが完了すると「公共職業訓練合格後の手続きについてのマニュアル」という資料を受け取れます。
4. 選考を受ける
職業訓練所での講座は資格さえあれば誰でも申し込めますが、必ずしも参加できるわけではありません。
参加するには、選考を受け、通過する必要があります。
選考は筆記試験と面接によって実施されます。
筆記試験は一般的な学力を図るもので、あわせて適性検査もおこなわれます。難しい内容のものではありませんが、自信がない方は事前に対策しておきましょう。
また、Web系の職業訓練所など、講座の種類によってはその業種に関連する問題が出題されるケースもあるので、事前に基礎知識についてだけでも復習しておくようにしてください。
面接では、志望動機や今後のキャリアプラン、職業訓練を完了した後にきちんと就職する意思があるかどうかなどについて質問されます。
5. 入所する
見事選考を通過したら、職業訓練所に入所するための手続きをおこなわなくてはいけません。
入所が決まった後で、
やっぱり今すぐ就職したい
と考えが変わることもあるかと思います。その場合は必ずハローワークの担当者に相談し、指示をあおぐようにしてください。
面倒かもしれませんが、選考を通過したにも関わらず連絡も手続きもおこなわずに資格を取り消されてしまうと心象がよくありません。
今後改めて職業訓練所の制度を利用したいとなった場合、担当者にツッコまれてしまう可能性もあります。
職業訓練所への入所の手続きをおこなう際に必要になるものについては以下のとおりです。
- ハローワークのカード
- 選考結果通知書
- 雇用保険受給資格者証
- 公共職業訓練合格後の手続きについてのマニュアル
- 写真
これらを準備し、期日までに必ず入所の手続きをおこなうようにしてください。
まとめ

転職する際に活用できる職業訓練所について紹介していきました。
職業訓練所は、今後の自分のキャリアのことを考えて知識やスキルを身につけることができる便利な施設です。
一部有料の職業訓練所もありますが、離職者訓練や求職者支援訓練などすでに退職し、転職先を探している方向けの職業訓練所は無料で利用可能です。求職者支援訓練に関しては月に10万円の給付金を受け取りながら転職できます。
そのため、身につけたい知識やスキルが決まっており、そのために職業訓練所を利用するのであれば特に問題はありませんし、非常に魅力的な制度です。
しかし、そうでない場合の利用はいたずらに転職先が決まるまでの時間を延ばしてしまうだけなのでおすすめできません。
失業保険を受け取りながら転職サイトや転職エージェントを活用して効率的に転職するという方法もありますので、ぜひそれらの方法も検討してみてください。
